4 弁護士道の七灯 (『法律学楽想』p190〜193)
アメリカの司法試験科目には法曹倫理があるときく。我が国の司法試験にも、法曹倫理科目があった方がよいと思う。
そういえば公務員にも倫理に関する試験がないようである。公務員倫理法などを制定するよりも以前に、倫理を試験科目に加える方がよくはないかと思う。倫理は知識ではない。行動である。試験勉強として覚えても意味がないという者もある。しかし、行動を選択するときある準則を知識としてもっているのとそれがないのとは大違いで、知識としてでも知っていればこれに従い易いのではなかろうか。近頃、弁護士も研修が義務づけられてきたとかで講義録を読ませてもらって、大いに意を強くしているが、なお制度的には更に一考を要することと思われる。ただ、法律家たる者、自主自律、自ら学び自ら律するべきことでもあろうかと思う。弁護士会などの出している各種のテキストをよく読み込んでよく考え、修習時代に自らの法曹としての行動の準則を確立して欲しいものと思う。
今でも研修所の授業のなかに弁護士のみならず法曹倫理も存し、そこで標準的なテキストも示されると思うが、私が修習時代にすすめられて後に読んで感動したのは、イギリスのパーリー判事の「弁護士道の七灯」(「弁護の技術と倫理」桜田勝義訳・日本評論社)である。
研修所で、萩原太郎教官から法曹の徳の第一は誠意であると、この本を必読書と勧められた。
弁護士の守るべき徳目は多岐に亘ると思うが、ここでは誠実、勇気、勤勉、機知、雄弁、判断、そして友情の七徳目を掲げてある。各徳目につきパーリー判事の説くところは、直接テキストに当たってもらう方が新鮮でもあり迫力もあるので、ここでは第一徳目の誠実について私なりに感じていることを記してみる。