2.勤務弁護士について

1. 前史

 仁平志奈子弁護士のように29期の若(?)先生が未だにサポートしてくれるし、私の人格識見備わってきたのか、近年は若先生の定着が良い。昔は私が未熟だったのか、相性が余程良くなかったのか、三週間で辞めた人や一年〜二年程度の在籍で事務所を不満として移籍されることもあった。
 私が修行した前田事務所では、藤田一伯弁護士と私が一期である。前田知克先生も相当の個性派なのだが師匠譲りではなく私は師匠以前からの個性の強さを未だに維持していると見られる。個性の強さがいけないとばかりは云えまい。極力情報は開示するので事前に充分時間を使い内外多様に当事務所を研究されたうえ選択願いたい。
 納得出来ないボスのところで修行するのは弁護士としての成長に有害だ。ただ、途中で事務所を代わるのは、包丁一本さらしに巻いて、腕を磨く為店を代わる料理人的弁護士には向いてるかもしれない。しかし、そのような方法は、「ローマ法を通じてローマ法の上に」「青は藍より出で藍より青し(出藍の誉れ)」を目指して農耕民族的・というか徒弟的修行をする弁護士にとってはあまり有益ではない。そして受け入れるボス側としても若先生との相性が良くなくすぐ辞められるのは依頼者との関係もあって仲々つらいものがある。

2. 勤務弁護士も独立の弁護士である。
(1) 事務所の事件であっても自分の事件であればどの様に解決するか事件処理案を作って自分なりの作戦を立てて欲しい。案作成に当たって法律文献に当り又先輩、同僚の意見を徴して、より完壁を期せられれば幸いである。
そのうえで仁平乃至内野に意見を求め了解を得て実行に移して欲しい。

(2) 独立の判断主体としての自覚と自負をもって主体的に事案の解決に当たって欲しい。当然、依頼者との接触も自由に願いたい。

(3) 斯く言うのは、独善を勧めるものではない。先輩、同僚あるいは後輩と闊達な意見を交換し、より合理的解決の方向、方法を研究し、あるいは先輩に助言、指導を求めることは有益なことと信ずる。
唯、他方イソ弁、という形式の生きている理由に思いを致し、事情聴取の仕方、事案の見通しの立て方、事案の本質の読み方、依頼者の心情の推移、裁判所との対立等、徒弟制度に伝承さるべきマニュアル化し難い多くのこともあるので、疑問点がある場合や進行の節目には、仁平乃至内野への報告と意見の聴取、及びこれの尊重を願いたい。

3. 個人事件には、3割の分担金拠出を願いたい。
 設備、備品、事務職員、勿論ボスも同僚弁護士も、お互いに助け合って自由に個人事件に活用願いたい。それにより擬似的事務所事件となり、事務所の一体性を高めたい。

4. 原則的には他の事務所、或は他の事務所所属の弁護士との共同の受任は避けて欲しい。他の事務所等との共同受任を希望するときは許可を求められたい。
事務所の一体感が損なわれるので原則禁止であるが、受任の必要性・事務所への稗益があれば受任を認めたい。

5. 勤務弁護士報酬は、同期の弁護士の水準以上に保ちたい。
 これに悖ることがあれば直ちに指摘願いたい。そして研究と業務の質、量及び人格の陶冶において、同期の水準を越えられんことを期待する。
 尚、当初3〜5年間は定額で4〜6年目から定額支給金額を逓減していって、歩合額を漸増させていくなど話し合って決めたい。

 ※ 妊娠子育て(学童児)期間中は、勤務時間・報酬等相談に応じます。

6. 事務所はいわば戦場である。緊張感溢れる生きる実感に満ちた「場」でありたい。
 そのため、
事務所内での読書は、法律雑誌等法律にかかわり或は関係するもののみを、たとえ休み時間といえども心掛けるよう願いたい。法律雑誌以外の読書は法律事務所としての緊張感を損なう恐れがある。
 その他事務所内の生活規律については事務職員に対し私語の禁止等相当厳しい要望をしている。「弁護士だから我侭が許される」と事務職員に怨嗟の心を起こさせることは避けて事務所の執務環境を緊張感、充実感あるものに維持されるよう期待する。
 もちろん、必要なとき、時間内に私用で外出することは許容している。あくまで「場」としてのことである。

7. 留学について
 希望があれば3年勤務後1年程度無給で、と考えているが、相談に応じたい。

8. 独立について
 少し大きな仕事は、チームを組まないとどうしてもできない。そこで、相当規模の事案も解決できる事務所ボリュームを達成したいし、又お互いの気心を通じ合わせて、事務所内の経験の蓄積により、より質の高い仕事が出来るように、長期の所属を希望する。所属の形態は勤務から、事務所に経費を分担する事務所内独立に至る形まで様々としても。
 しかし、自分の意思で自由に事務所経営をしてみたい、それだけの依頼者の信頼も獲られた、として独立される時は、できるだけ早く、できれば1年位前に告げてもらって、新弁護士の採用など独立された後の事務所業務により支障を少なくするよう心配され、喧嘩別れにならないよう、そして独立後もお互いに協力できるよう調整をとってもらえれば有り難い。
 また、事務所と感性が合わず、途中で事務所を変わりたいときも、感情的にならずに真意はともかくとして表示行為は冷静にして、にこやかに願えれば幸いだ。
 独立される方にとって、当事務所で修行したことが誇りになるような事務所たるべく努力してゆきたい。

9. 国選など義務受任事件については、分担金の納入は1割とする(個人受任の3割分担の例外)。

10. ビルは管理人が宿泊管理しているので遅くまで使えなくはない。しかし、管理人に迷惑をかけるので日常業務は原則午後9:00まで、おそくとも午後10:00には終わって欲しい。

11. 業務は7割が法廷活動、3割が法廷外活動で、法廷外活動の7割が顧問業務であとの3割が訴訟外交渉ではないかと実感している。

12. 勤務時間
 出勤時間は午前9:00厳守のこと。
 事務所共有の予定表上において、立寄りの事前通告があればその後で了解。
 毎朝(週一回の事務局会議の日を除く)9:00〜9:30まで30分間“打合せ”を行う。仕事上の意思疎通を図る為。

13. 勤務時間中
(1) 午前9:00から午後5:30までの勤務時間中は原則として在室して欲しい。
顧問活動として電話相談に応答できるようにするためと、事務局からの相談に応じられるようにするため。
(2) この時間内の外出は、事務所共有の予定表上において予定を入れてください。
外出は出先、用向き(抽象的に私用とでも)、連絡方法を必ず事務局に知らせておけば自由です。
(3) 勤務時間中に個人事件、個人的用件を入れたいときは、早めに予定を入れ予定表に記入しておくこと。入力順に優先とします。予定を入れておかないと、都合悪くないものとみて事務所の予定を入れてしまうことがあり調整に厭な思いをします。
(4) 用件の重要性にもよるが、変更はあるとしても、予定は事務所事件、個人受任,個人的用件の別でなく原則早く事務局に告知した順に仕事をしてもらうこととしたい。

14. 弁護士登録の挨拶状で心洗われる爽やかさを感じたので、ここに道あゆみ弁護士の案内状を紹介しよう。

 謹啓
 皆々様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、私こと、
この度、二年間の司法修習を終え、松尾綜合法律事務所で法律家としての第一歩を踏み出すこととなりました。
 中学生のとき、将来の夢を語った作文で「漫画家になれなければ、弁護士になりたい。」と綴ったのは、もう一五年も前のこと。以後、まわり道を経て、その夢に近付くこととなりました。思えば当時、「弁護士」の職業の意味など知るよしもなく、ただ、幼かった私にとって、「弁護士」というその言葉は、潔さと、理知と、情熱を感じさせる響きがありました。
 予測もつかない事件が起き、ますます価値観の混迷する昨今、我々弁護士に果たして何ができるのか、何をすべきなのか、未熟な、今の私には到底わかるはずもありません。
 しかし、これから、夢を語る子供たちが、「弁護士」という言葉を耳にし、口にするとき、そこに私が感じたのと同様の、力強さと、正しさを感じられるよう、僭越を承知で力を尽くしたいと思います。
 文字通りの「ひよっこ」ではありますが、皆様のご指導を受けて、できる限り精進していくつもりでおります。どうかよろしくお願い申し上げます。

敬具